大判例

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東京地方裁判所 昭和40年(ワ)2825号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕五、進んで被告小山の責任について考えるに先立ち、自賠法三条の解釈につき一言する。被告ら訴訟代理人は、被告松村の無断運転の事実を主張するに当り、同条につき事故の時点における具体的運行が被告小山のためになされている場合に限つて同被告を運行供用者と呼びうる、との解釈を前提としている。当裁判所は、例えば所有権者、自動車泥棒などのように、一般の自動車の運行を支配しひいてその運行による利益が帰属すると見うる地位にあり、よつて事故に先立ち当該自動車の運行を支配していたと認められる者は、それだけで同条の「自己のために自動車を運行の用に供する者」に当るのであつて、その限り抽象的に「運行供用者責任」(利用権限ある者の場合には、これを「保有者責任」とも言いうる。)を論じうるのであるが、ただ、「その(自動車の)運行によつて」事故が生じた時点においてかかる運行の支配が存在していなかつた場合には、具体的にはその運行供用者責任が否定せられることがあり、この後者の要件すなわち事故以前における運行支配の喪失は被告(抽象的運行供用者)が抗弁として立証すべきものであるとの見解(ジュリスト三六三号四二頁参照)に責するので、被告ら訴訟代理人の前記解釈には従いえないが、その主張にかかる無断運転の事実は、右の抗弁事実として主張せられたものと解して、以下判断することとする。すなわち、本件に即して言えば、被告小山が本件事故当事加害車を所有していたことは当事者間に争いがなく、その経営する小山水道工事店の営業のため日常加害車を使用する地位にあつたことは同被告の自認するところであるので同被告に対しては、前段に述べたような意味で加害車の運行を支配していたものとして、抽象的に運行供用者としての責任を問いうるのであるが、特に具体的に本件事故についての運行供用者責任をも負わしめるためには、その主張にかかる被告松村の無断運転が、被告小山の運行支配を果して失わしめたかどうかを検討しなければならないのである。(倉田卓次)

〔編注・事実は「(3) 加害車は被告小山が営業用として営業所内の車庫において保管していたもので(被告松村の住所地が保管場所であつたのではない。)業務以外に私用で運転することは被告松村はじめ使用人に厳禁してあり、万一運転する場合には被告小山の許可を要することとしていた。そして、被告松村は常時自転車によつて通勤していたので、本件事故以前には加害車を通勤に用いたことはなかつた。然るに、当日は雨天であつたため、同被告は被告小山に無断で加害車を持ち出したものであつて、盗み出されたも同様であり、もとより乗務執行中でなく、その後の飲酒も被告小山の干渉すべきものではない。結局小山は被告松村の使用者ではあるが、本件加害行為は被告小山の業務執行に付きなされものでなく、また加害車は被告小山の所有する「被告小山のなめに運行の用に供する」車ではあるが、本件加害行為は「その運行すなわち被告小山のための運行によつて」なされたものではない。従つて、被告小山は民法七一五条によつても自賠法三条によつても、賠償責任を負うべきものでない。

かりに運行による加害行為であるとしても、本件事故発生は前記のように被害者訴外勇の一方的過失によるのであつて、運転者被告松村には過失なく、また保有者被告小山の選任監督や車の保管にも過失なく、加害車に構造の欠陥・機能の障害があつたのでもないから、被告小山には賠償責任はない。またかりに、被告松村の持出しを可能ならしめた点で被告小山の加害車保管に過失があつたとしても、それは本件事故発生には因果関係がない。〕

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